【第3回】敷居の低い予約制です
「予約制っていわれると、敷居が高く感じられるでしょ?」
なタ書の店主・藤井佳之さんに言われて、正直なところ戸惑った。
ここのところどのお店に行くにも、「予約」して行っていたからかもしれない。
マッサージ、美容院、病院、古本屋……古本屋?
「予約して来るってなったら、予約するっていう手間がかかっちゃうじゃないですか」
その通りである。
その手間をかけてでも、その場所に行きたいという人間が「わざわざ」「予約」するのだ。
そういえば、予約しないと行くことができない古本屋さんなんて、なタ書以外に知らない。
藤井さん曰く、予約してでもなタ書にやってこようという方々は、パンチの効いた人が多いという。
ところで、なタ書は予約制をとっているが、別に敷居を高くしようとして予約制を始めたのではないそうだ。
そもそも、予約制は必要だったから取った手段なのである。
藤井さんとお話していると、「必要か、そうでないか」を判断するというようなセリフが多々出てきた。
必要だから、やる。
予約制はウケ狙いで始めたわけでもなかった。
藤井さんは、なタ書オープン当初、古本屋だけではとても食べていけないと考えていたそうだ。
そのため、生活のために必要な仕事もしながらなタ書を開業した。
片方の仕事がないときに、なタ書を開ける。
なタ書が確実に開いているときにお客さんに来て欲しいから、予約制にした。
その逆も然り、お客さんが確実に来るときになタ書を開けることによって、経費を最小限に抑える。
だから、予約をしていなくても、お店が開いていたら自由に入ってきてOKなのだ。
むしろ、開いていたらラッキーである。
なタ書は予約制だけど、開いていたら予約しなくても入ることができる古本屋さんなのだ(ここ、要チェック)。
藤井さんは、元々は東京の大手出版社に勤めていたそうだ。
東京の大手出版社を辞めて地元に戻り、二足のわらじを履いてまで開業した古本屋さん・なタ書。
さぞ熱意満々でなタ書を始めたのだろうと思われるかもしれないが、そういうわけでもないそうだ。
藤井さんとお話していると、良い意味で肩透かしを食らうことが多い。
それが藤井さんの魅力であり、なタ書の魅力に繋がっているのかなと思う。
次回は、どうして藤井さんはなタ書を始めるに至ったのかについてお話しよう。
店舗情報
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夏也園子
1986年7月31日生まれ。
小説マンガゲーム好きで基本雑食。
最近はなにも読めていない・できておらず(涙)
2014年『フェチクラス』(双葉社)でデビュー、
ほかに『リアルアンケート(上・下)』(KKベス トセラーズ)がある。
最近はホラーだけでなく別ジャンルにもチャレンジ中&新たに本を出版すべく奮闘中。
☆2017年『大原美術館とあなたが紡ぐ物語~小川洋子がいざなう朗読会Ⅲ』にて入賞しました。
https://www.ohk.co.jp/ohara/