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本屋さんに知ってほしい!NetGalleyとは?
皆さんは、NetGalley(ネットギャリー)をご存知だろうか。
私も今回の取材をきっかけに知ったのだが、NetGalleyとは、本に携わる仕事をしている方が、発売前の本の内容を知ることができるものだ。
発売前の本のゲラ(Galley)を読むことができ、その本のレビューを投稿することができる。
もしかしたら、Twitter上で、「販売前の本のゲラを読んで感想を書きませんか?」という声掛けを行っている出版社や取り組みを見かけたことがある人もいるかもしれない。
実際に、Twitterの募集に応えたことがある人もいることだろう。
NetGalleyは、こうした取り組みの発展形といえるかもしれない。
NetGalleyの仕組み自体は、発売前に無料で本の内容を知ることによって仕事に活かせる方が利用できるものであるが、そのメリットについてはたくさんの可能性がある。
今回からしばらく、NetGalleyを実際に利用している方の声を紹介しながら、NetGalleyの有用性について具体的にご紹介していきたい。
NetGalleyを利用している方の声【第1弾】として、まずは丸善岡山シンフォニービル店の理工書コーナーを担当されている加藤一博さんのお話をご紹介しよう。
加藤さんがNetGalleyを知ることになったきっかけは、「もっとBOOKMAN」である。
2017年6月、おかやま未来ホールにて開催された「もっとBOOKMAN2017」に、加藤さんは参加されていた。
加藤さんは、「もっとBOOKMAN」をきっかけに出版デジタル機構の取り組みに興味を持ち、NetGalleyを知ったという。
加藤さんは、NetGalleyを仕事上の販促ツールとしてみたとき、「売り手にメリットがあるもの」と感じているそうだ。
NetGalleyは、本屋さんを盛り上げる大きな可能性を秘めている。
加藤さんが考える「売り手にとってのNetGalleyのメリット」について、具体的にお伝えしていこう。
売り手にとってのNetGalleyの魅力
加藤一博さんが勤めている丸善岡山シンフォニービル店は、いわゆる大型書店だ。
店内のイメージは、本屋さんというよりも図書館に近いかもしれない。
書店には、毎日大量の新刊が届く。
店内に新刊をすべて並べようと思うと、当然、元々置かれていた本が、新刊を置く量の分だけ本棚から姿を消す。
もしかしたらこれから売れたかもしれない本も、新しくきた本のスペースを確保するために外さなくてはいけないんです。とにかく毎日大量の本がくるので、本を並べることに必死で、中身を確認する余裕がない。
たくさん押し寄せてくるのは新刊だけではない。
そもそも、新刊がやってくるのは「発注」しているからだ。
そして、発注するきっかけとなるのは、ほとんどの場合、出版社から送られてくるFAXである。
このFAXの内容は、出版社によってさまざまだ。
丁寧に本の内容を記してあるFAXや、本の冒頭の原稿が付いているFAXも存在する。
しかし、場合によっては、本の内容を推測することが難しいときがある。
本のページ数や内容がわからない場合、どの売り場に置けばいいのか、そしてどのくらいの売り場スペースを確保したらいいのか、あらかじめイメージしにくい。
ここで役に立つのがNetGalleyだ。
NetGalleyに登録しておくと、発売前の本の内容をチェックすることができる。
自分が担当しているコーナーの新書について、あらかじめチェックしておくことによって、これからどんな本が発売されるのか、どの本をどの程度発注するかということを考えることができるのだ。
もちろん、本の読みやすさもチェックすることができるし、どんなお客さんに向いている本なのかも考えることができる。
加藤さんは、NetGalleyについて、文芸書よりも理工書(専門書)コーナーの担当者のほうがメリットを感じやすいのではないかと考えているそうだ。
加藤さんは、大学は文系の学部を卒業されているものの、担当しているのは自然科学系の理工書である。
自然科学とは違う畑からやってきたため、新鮮さを感じる一方で戸惑いや悩みも多かったのではないだろうか。
だからこそ、加藤さんは、「専門外だ!」と感じながらも理工書コーナーで奮闘する書店員さんたちに、NetGalleyのメリットを伝えられる。
次は、加藤さんが教えてくれた、理工書コーナー担当者に向けたNetGalleyのメリットについてご紹介しよう。
理工書(専門書)コーナーこそNetGalleyは便利!
加藤一博さんは、丸善岡山シンフォニービル店で自然科学系の分野の専門書を担当している。
書店で「こんな本を探しているんですが……」と本に関する質問が飛んでくるのは珍しいことではない。
自然科学系の分野を専門とする学生さんや、仕事で医療系の本を購入しなければならない方などが声をかけてくることがある。
専門性の高い本を探しているからこそ、「薬局に置く用の〇〇な本を探しているのですが……」というような、ピンポイントの質問が飛んでくることもあるだろう。
加藤さんは、こうしたお客さんの質問に丁寧に答えている。
加藤さんは、もともと文系出身だ。
自然科学系の専門的な勉強を行ってきたわけではない。
しかし、自然科学系の本について、どんな本が出版されており、どの本棚にどんな内容の本を配置しているかについては説明することができる。
それは、理工書コーナーを長年勤め上げてきた経験からできることではないだろうか。
おそらくだが、加藤さんも、自然科学系の本を任された当初は困惑することも多々あったことだろう。
出版社からあらかじめ送られてくる情報だけでは、専門性が高いがためにわからないことも多く、新刊が実際に店舗に届いてから本の内容を追いかけるということもあったのではないだろうか。
そして、同じような悩みを抱いている書店員の方もいるのではないだろうか。
NetGalleyでは、文芸書だけでなく専門書の新刊も扱っている。
NetGalleyで確認できる新刊だけでも、あらかじめチェックすることができれば、お客さんに専門書のことを質問されても答えやすいのではないか。
加藤さんいわく、「本の中身をサッと見るだけでも、本の読みやすさを確認することができる」という。
本の内容についても、どの系統の本なのかチェックすることができるし、分野ごとの出版傾向も考えられる可能性がある。
新刊をすべて読むのは、まず難しいだろう。
しかし、サッと見るだけならそこまでの手間暇はかからないし、興味のある分野や知っておきたい分野だけでも見ておいて損はない。
書店員は、本を並べるだけではなく、お客さんが求めている本を案内することも大切な仕事だろう。
売り手として、本の情報をしっかり身につけるためのツールとしてNetGalleyはとても便利なものではないだろうか。
第2回へ続きます▶︎https://honya-trip.com/netgalley2/
NetGalleyは人をつなぐ NetGalleyは、所属する店舗名(例えば加藤さんの場合だったら「丸善岡山シンフォニービル店」)をもって、無料で登録することができるシステムである。 本に携わる仕事をしている方だと、書店以外にも、図書館に勤めている方でも利用することができる。 ...
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夏也園子
1986年7月31日生まれ。
小説マンガゲーム好きで基本雑食。
最近はなにも読めていない・できておらず(涙)
2014年『フェチクラス』(双葉社)でデビュー、
ほかに『リアルアンケート(上・下)』(KKベス トセラーズ)がある。
最近はホラーだけでなく別ジャンルにもチャレンジ中&新たに本を出版すべく奮闘中。
☆2017年『大原美術館とあなたが紡ぐ物語~小川洋子がいざなう朗読会Ⅲ』にて入賞しました。
https://www.ohk.co.jp/ohara/