NetGalleyのすすめ【第16回】 ~ 広島 蔦屋書店の読書会 インタビュー記~

こんにちは、ネットギャリーの藤吉です。前回の広島 蔦屋書店の江藤宏樹さんのご紹介の中で触れた「広島 蔦屋書店の読書会」。
毎月、参加者がおすすめの本を持ち寄って紹介し合うスタイルの読書会ですが、今回行われたのは「ゲラ読み読書会」。

ネットギャリーに掲載されている作品の中から参加者全員が同じ作品を読み、読書会で感想や思いを語り合う。
そして、ネットギャリーにそれぞれがレビューを投稿し、発売前から本を応援するという企画内容。

「広島 蔦屋書店の読書会」としても初めての試みとなる本企画の趣旨に賛同し、ゲラを提供していただいたのは、集英社 書籍販売部。さらに読書会にも2名参加いただき、合計12名のにぎやかな読書会となった様子をご紹介します。

藤岡陽子さん最新作『きのうのオレンジ』

提供いただいたゲラは、10月26日刊行の文芸小説『きのうのオレンジ』
藤岡陽子さんの最新作だ。

「弱音を吐かない人は、いつだってひとりで闘っている」
がん宣告を受けた<彼>と、彼を支える<家族>の物語。
心揺さぶられる感動長編。
三十三歳の遼賀が受けた胃がん宣告。どうして自分が……涙が溢れてきて、恐怖で震えが止まらない。その時、郷里の岡山にいる弟の恭平から荷物が届く。入っていたのは、十五歳の頃、恭平と山で遭難した時に履いていたオレンジ色の登山靴。それを見た遼賀は思い出す。あの日のおれは、生きるために吹雪の中を進んでいったのだ。逃げ出したいなんて、一度たりとも思わなかった――。

集英社HPより



読書会では、参加者の自己紹介を兼ねながら、司会の江藤さんが順番に指名して感想を述べあう形式をとった。さらに、事前に共有していたいくつかの問いにも答えてもらった。

この小説を読み終わって、すぐに湧いてきた感情は?

いつか伝えようと思っていてもなかなか伝えられないことを、いつかではなく今伝えようと思った。その「いつか」は来るかどうかわからないのだから。

涙が止まらなかった。でもほんとにおもしろかった。これに尽きます。

悲しみの中にあたたかさが溢れる。読後は、肯定感というものを強く感じた。その肯定感が明日に向かっていく力になる。

あたたかい、穏やかな気持ちになった

最近小説を読めてなかったので良い機会をいただいた

最近放送されている朝の連続テレビ小説の主題歌を思い出した。
無理しないで頑張っていこうとほっとする気持ちになった。

「居場所」と「許し」という言葉が浮かんだ。
自分や自分の大事な人の居場所がどこなのか、今そこにいる自分自身を許せているかと自問自答した。

どんな状況でも優しくなれる人はそうそういない
人間の優しさと強さが詰まっていると思いました

敢えて抑えた表現で感情的にならず淡々と綴っていたと思う。
それでいて、何回読んでも心が動かされた。

重い話と聞いていたが、さらっと読めた。藤岡さんだからこその描写が非常に上手だと思った。

重たいというよりかは、ちょっとしたすれ違いが、心にひっかかる
重たいという感じではなかった。思ったよりさっくり読めて、読みやすさがあった。

自分の中の苦しみや悲しみなど、いろんな感情で揺さぶられてしまったが、読了後は凪のような感情になったことにびっくりした。

小説ではあまり味わったことのない読後感

激アツストーリーなのに、淡々としていて、完全燃焼して幕を閉じるというより、むしろ清々しさを感じた。

最も心に残った登場人物は?

・遼賀くんが一番好き
・お母さん 自分と一番年齢の近いからです!
・看護師をやっている泉さん
・遼賀、恭平の関係
・遼賀と恭平の父親
など

心に残ったシーンは?

・雪山のシーン
・お母さんが見舞いにきたシーン
・この小説は語り手が変わっていく所が印象的
・二人に対して頑張りすぎんなよ!と声をかけた。
など

『きのうのオレンジ』どんな人に読んでもらいたいですか?

・普通に頑張っているみなさんに
・毎日が退屈だと思っている人へ
・私自身に贈りたい
・福祉関係の仕事で働いているので職場の後輩たちに読ませたい
・医療関係じゃない人に読んでもらいたい
・10代の方、若い方に読んでもらいたい
・私の父親に読んでもらいたい
など

年齢や職業、立場や経験など、自分の人生と重ねて読む人もいれば、純粋に1つの文学作品として楽しむ人もいる。実に様々な読み方があり、感想がある。そして、これほどの感想が出てくるのは、 登場人物たちのその時その時で変わっていく心の変化を、取りこぼすことなくつぶさに描き、それらを織り交ぜながら1つの物語を織っていく『きのうのオレンジ』だからこその魅力 ではないだろうか。

▲オンラインにて行われた読書会。広島 蔦屋書店、自宅、車内など、様々な場所から参加



出版社と一般読者

「広島蔦屋書店の読書会」に出版社が参加したのは今回が初めて。この機会に、参加者から集英社に質問を募ってみた。

Q. ゲラというものを初めて読んだのですが、この時点からまた編集されていくものなのでしょうか?

A. 今回お読みいただいたゲラは、文芸誌「小説すばる」に連載していた原稿を元に作られたものになります。ここから何度も手を入れて、単行本として刊行します。

Q. 表紙はどのようにして作られるのでしょうか?

A. 作品によって異なりますが、まずは作家さんの希望をヒアリングしたり、デザイナーさんと相談をして、表紙のイメージを固めていきます。例えば、イラストにするのか、写真にするのか。同時に、営業部と編集部で打ち合わせを重ね、その作品の対象読者層を分析・想定します。そのうえで、もしイラストで進めるということになれば、イラストレーターさんの選定から、発注、打ち合わせという過程を経て、デザイナーさんがそのイラストを活用した“装幀”(=表紙を含む本全体のデザイン)を作り上げていきます。

など、日ごろの疑問を出版社に直接投げかけることができ、参加者一同興味津々な様子だった。

また、著者の藤岡陽子さんからも、
「このような貴重な場で取り上げてくださったことがただただ嬉しいです。ありがたいです。この一冊がみなさんのオレンジ、希望に繋っていくことを心から願っています」というメッセージを頂戴し、集英社さんに代読していただいた。
参加者一同あたたかな気持ちになったあと、最後に江藤さんからの挨拶で読書会は終了した。2時間強の濃い読書会だった。

初めての試みを終えて

全員が同じ本を読んで読書会を開催するということは、「広島 蔦屋書店の読書会」としても初めての試みであった。同じ本を自分と全く違った読み方をしている人の話を聞くことで、新たな視点を獲得することができ、とても良い刺激となったようだ。
司会の江藤さんは「読み方も人それぞれ。人の数だけに読み方があり、それらの思いから人と本、人と人がまた出会って繋がっていくのが読書の良さ、醍醐味だと思う。今回初めてだらけの中で実施したが、大成功だったのではないでしょうか。」とほっとしていた。

今後も新しい取り組みにどんどん挑戦し、またここで本と人の出会いの場を提供していくのだろう。引き続き「広島 蔦屋書店の読書会」に注目していきたい。

▲広島 蔦屋書店イベント台『きのうのオレンジ』展開の様子

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インタビュー後記

前回の取材で「広島 蔦屋書店の読書会」の読書に対する熱い思いを感じていたことと、ネットギャリーに発売の3ヶ月も前から掲載されていた『きのうのオレンジ』に対する集英社 書籍販売部の熱量に、両者をつなげたいという企画を提案するところから始まった今回の読書会。賛同していただいた集英社さん、広島 蔦屋書店の読書会の皆さん、江藤さん、本当にありがとうございました。また一つ、素晴らしい「一期一会」の機会を頂戴しました。



【広島 蔦屋書店】

広島T-SITE 広島 蔦屋書店
〒733-0831 広島県広島市西区扇二丁目1-45
TEL:082-501-5111
営業時間:08:00-22:00

連載:NetGalleyのすすめ~書店員インタビュー記~
▶︎https://honya-trip.com/tag/netgalley/

 

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