【第2回】なタ書ならではのちぐはぐ感が面白い!
なタ書の店主・藤井佳之さんいわく、なタ書の建物は元々連れ込み宿だったという。
連れ込み宿とは、今風にいえばラブホテルのことだ。
だから、なタ書の2階には便所(あえて便所と書いてみる)が3つある。
今も使用できるのは1つだけだ。
藤井さんがこの建物を見つけたときには、すでに仕切りは取り払われていたそうだ。
藤井さんの話を聞きながら店内を見回すと、レトロな皮のソファや冷蔵庫、そして謎の黒い木彫りの置物が目に止まった。
この木彫りの置物はすっぽんぽんだ。
材質は黒檀(コクタン)といって、なかなかの高級材質らしい。
取材後に調べてみると、古代から世界各国で家具や弦楽器などにも使用されていた銘木だとわかった。
しかし、銘木とも知らず、すっぽんぽんの置物を見て「さすが、元連れ込み宿」なんてことを考えてしまった。
しかも、藤井さんの定位置と思われるスペースの天井には、何故か穴が開いている(元々電球があったそうだが、壊れたので取り外したらしい)。
失礼を承知で、藤井さんに、「なんだかこのお店、エロティックですね」というようなことを言ってみた。
藤井さんは、なんということもなく、「そうですか?」と答えただけだった。
個人的に、なタ書から感じるエロスと、隠れ家的な雰囲気から、尾崎豊の「I love you」を思い出すと藤井さんに伝えると、藤井さんは店内に流れる音楽について教えてくれた。
藤井さんの席の近くには、CDラジカセ(だったと思う)が1台あった。
そこから流れてくるのはラジオ番組なのだそうだ。
藤井さんは、ラジオ番組を適当に流して店のBGMにしている。
なタ書にやってくるお客さんから、「さぞレトロな音楽を選んで流しているのでしょうね」といった感じのことを言われることがあるそうだが、実際は違うらしい。
今流れているラジオ番組をそのまま流すので、尾崎豊が流れることがあれば、AKB48が流れることもあるそうだ。
このちぐはぐ感。
実は、音楽だけではない。
なタ書は古本屋さんであり、見た目からして過去にタイムスリップできそうなのだが、「今」もきちんと存在する。
古本屋さんでありながら、新刊も扱っているのだ。
私は1冊、『山田太一セレクション 思い出づくり』(山田太一:著/2016)を購入したのだが、藤井さんに、「それは新刊です」と言われてびっくりした。
ほかにも、店内で、映画にもなった『君の膵臓をたべたい』(住野よる:著/2015)を見つけた。
最近刊行されている瀬戸内関連の雑誌も並べてあった。
なタ書には「古」と「新」が混在しているのだ。
そのちぐはぐ感が、絶妙な面白さを演出しているような気がする。
今回は、主になタ書店内の雰囲気についてご紹介してみた。
次回は、もはやなタ書名物ともいえる「予約制」の謎に迫ってみたい。
店舗情報
なタ書〒760-0052住所 香川県 高松市 瓦町2丁目 9-7-2F「なタ書」の情報と予約方法はTwitterをチェック▶︎https://twitter.com/KikinoNatasyoこの本屋さんを紹介した記事...
「なタ書」の情報と予約方法はTwitterをチェック▶︎https://twitter.com/KikinoNatasyo
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夏也園子
1986年7月31日生まれ。
小説マンガゲーム好きで基本雑食。
最近はなにも読めていない・できておらず(涙)
2014年『フェチクラス』(双葉社)でデビュー、
ほかに『リアルアンケート(上・下)』(KKベス トセラーズ)がある。
最近はホラーだけでなく別ジャンルにもチャレンジ中&新たに本を出版すべく奮闘中。
☆2017年『大原美術館とあなたが紡ぐ物語~小川洋子がいざなう朗読会Ⅲ』にて入賞しました。
https://www.ohk.co.jp/ohara/