NetGalleyのすすめ【第7回】~「ブックランドフレンズ」河田秀人さん・西村友紀さんインタビュー記~

ブックランドフレンズは五感に響く本屋さんだ。

手動のガラス戸を開けると紙と墨の匂いがふわりと香る。
本棚にはびっしりと本が埋まっているのではなく、ちょこちょこ隙間がある。本の背に指をかけやすく、するりと手に取りやすい。

1冊1冊の本が「ここにいるよ」とメッセージを発している。少しくたびれた本があるのもまた、ひとつひとつの作品を丁寧に取り扱っている様子が伝わってくる。

お店の中心にある振り子時計は、定時になるとボーンと鳴る。店主の河田秀人さんがコーヒーの豆を挽く音とその香り。穏やかでどこか懐かしい店内で、ストレートのコーヒーを頂きながら、河田さんと西村友紀さんにお話を伺った。

↑店主の河田秀人さん。
とても聞き上手でありながらこだわりもしっかり持っていて、笑顔の優しい方です。

 


ブックランドフレンズは、いわゆる「町の本屋さん」だ。
店内は決して広くはなく、置くことができる作品数も限られている。
だからこそ、ブックランドフレンズが得意とする分野や作家の作品がある。

例えば、喜多川泰先生の作品をおすすめしています。喜多川先生の講演会の案内もしていますよ。5/13には京都で講演会があります。

↑河田さんいわく、喜多川先生の本を読んでお客様が変わっていく様子を見るのが楽しいとのこと。チャレンジ精神を刺激され、前向きになれると評判(*´∀`*)

 

書店員さんは、お客様の読書の幅を広げるために

NetGalley(ネットギャリー)を活用する利点としては、発売前の作品をチェックして推したい作品を見つけ出し、「コレ」と決めたら集中して売り出すことができることだ。本を仕入れる人、販売する人にとっては非常に大きなメリットである。

 

本を読むことに時間を割くという感覚はないんです。

そうお話してくださった西村友紀さんは、NetGalleyを知ったとき、すぐさま登録したそうだ。

西村さんがNetGalleyを利用して読んだ作品としては、『祈りのカルテ』(著・知念実希人)KADOKAWA刊がある。

読んだあと、出版社へレビューを寄稿するだけでなく、ご自身のツイッターにもそのレビューを載せて作品を紹介していた。

 

そして、サイン本も手配し、ツイッターで集客までされている。

ネットから本屋へと足を運ぶ導線をしっかりと工夫されて取り組まれている西村さんのツイッターアカウントを、ぜひフォローしてみてください。

 

実際、紙のゲラの方が読みやすいときはあるようだが、これまでなかなかゲラをもらえる機会が
なかったことを考えると、NetGalleyを利用する価値は十分にあると感じているそうだ。

「NetGalleyを利用することで、作品を無料で読むことができます。自由に使えるお金が少ない
方にとっては商材研究のためにはとても魅力的なツールです。」
そう、西村さんはおっしゃった。

河田さんも、NetGalleyによって作品のクチコミが増えれば、それまでその作品に興味がなかった層にも作品を読んでもらえるようになるのではないかと期待されている。より多くの書店員、図書館員、ブロガーなどにもNetGalleyの認知が広まると、利用者も増え、作品を応援する人が増えていく、また、読者モニターを生み出す方法として良いツールではないかと考えている様子だった。
お二方とも、作品を世間に広めていく手段としてNetGalleyのことを前向きに捉えている。

 

家族で本を楽しむ

家族で本を楽しむというと、どんなイメージが湧くだろうか。

幼い子どもを寝かしつけるときに、父親や母親が絵本を読んであげるイメージだろうか。

私には二人娘がいますが、本についてはお小遣いで買わせるのではなくて、私が買いますね。本は、娘たちだけでなく私も読みますし、結局家族のものになるので。

西村さんは新高校2年生と新中学3年生の女の子のお母さんだ。ブックランドフレンズにはパートで勤めているそうだが、本の発注もすれば帳簿もつける、喫茶店や病院などさまざまなところに本の配達にも行っている。本が大好きな書店員さんであり、お母さんである。

本だったら、義母も実母も快く買ってくれます。それに、私がここ(ブックランドフレンズ)で働き出してから、義母も実母も本を読むようになったんですよ。図書館にも通うようになりましたし。新刊のことを教えたら、買っといてって言われます。(義母も実母も)なんだかスポンサーみたいですね(笑)。

西村さんのご家族は、3世代に渡って同じ作品を共有することがあるそうだ。

娘が読んだ本を私が読んで、次に義母、次に実母といった具合に回し読みするんです。そうしたら、同じ話題で話ができます。年頃の孫がおばあちゃんと同じ話題で話せるんですよね。

↑子ども用の小さな椅子が可愛い!

河田さんも次のようにおっしゃった。

売れる本とは、やっぱりどんな層にも読まれる本なんだと思います。親でも子でも、おじいちゃんおばあちゃんでも楽しめる。

核家族が増えている現代で、3世代で同じ話題を共有するというのは珍しいことなのかもしれない。
河田さんと西村さんから、「本には世代を超えて人と人をつなぐ力がある」ということを具体的に教えてもらえた。

 

NetGalleyも含めて電子と紙の本が調和し、作品が人から人へ伝わっていけば、これからも世代を超えて読み継がれていく作品が増えていくのではないだろうか。

 

 

【インタビュー後記】

ブックランドフレンズのドアを開けたとき、「好きだ!」と思った。
一瞬で心奪われるお店というか……本当は紹介したいことがたくさんあるんだけども、これはもう、現地に行ってみてほしいというしかない!
ブックランドフレンズは体感するのが一番( ´∀`)b
代わりに(?)ブックランドフレンズのなかで、「棚ごと家に持って帰りたい……!」と思わされた棚から買った1冊をご紹介。

↑この中から2品買った私……ひとつはふすま地ブックカバー! 初めて見た(°д°)

『草の辞典 野の花 道の花』(森乃おと 著/雷鳥社)です。
半透明のカバーに草花があって、本体の葉の絵と合わせてカバーイラストになるのだ!
このカバーの質感が最高に好きヽ(*’ε`*ヽ)
中のページ数の字体がまた、草っぽくて可愛い!
こう、土手に広がる小さな春草のような、アスファルトの隙間にちょろりと生えている草のような、とにかく草っぽい(`・ω・´)
イラストも素敵だし、細部までこだわり抜かれた一作だと思いました。
草花に込められた意味も載っていて面白いです。
オオイヌノフグリのページを見て、「そうそう、この名前ワンコのう●こが由来なんだよねえ」と思い出し。「でも、とある国では〈星の瞳〉って呼ばれているんだよって、話したことがあったなあ」と思い出しました。

 

河田さん、西村さん、インタビューにご協力くださりありがとうございました。

2018年3月31日 夏也園子

 

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NetGalleyのすすめ~書店員インタビュー記~
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夏也園子

1986年7月31日生まれ。
2014年『フェチクラス』(双葉社)でデビュー。
2017年に、尖端出版より『フェチクラス』の海外版(中国語版)が発売されている。
ほかに『リアルア ンケート(上・下)』(KKベストセラーズ)がある。
近頃は集中力アップと冷え対策のために、
入浴中にお絵かきロジック(ピクロス的なの)をしている。
あったかいルイボスティーに牛乳を入れて、
ルイボスミルクティーにして飲むのにハマり中♪

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