NetGalleyのすすめ【第5回】~「明屋書店 砥部店」新井智美さんインタビュー記~

あなたのなかで生き続ける本を届けたい

今回は、明屋書店砥部店にいらっしゃるNetGalley(ネットギャリー)ユーザーの新井智美さんにお話を伺った。

新井さんがNetGalleyを知ったのは、たまたまだったという。
パソコンやスマホをよく利用するそうで、ネットサーフィンをしていると偶然NetGalleyのサイトを見つけたようだ。

新井さんがNetGalleyを利用して読んだ作品としては、『オブリヴィオン』(著・遠田潤子)光文社刊『星の子』(著・今村夏子)朝日新聞出版刊『キッズファイヤー・ドットコム』(著・海猫沢 めろん)講談社刊がある。

▲『オブリヴィオン』(著・遠田潤子)光文社刊

▲『星の子』(著・今村夏子)朝日新聞出版刊

▲『キッズファイヤー・ドットコム』(著・海猫沢 めろん)講談社刊

 

新井さんは文芸書だけでなく、ビジネス書や自己啓発書、理工書関連の本などさまざまなジャンルの本に興味を持っており、読書量も豊富だ。
もともと本好きで、熱い探究心を持っているからこそ、NetGalleyと出会ったのかもしれない。

ネットにも精通している新井さんいわく、

ネットには、紙の本が好きという方がたくさんいます

本との出会いのきっかけはネットだとしても、紙の本が好きだという方が多いと感じているそうだ。
新井さん自身、紙の本が好きだという。
「電子書籍」という言葉が普及して以来、従来の本のことを「紙の本」と呼ぶことが多くなった。
「電子書籍」と「紙の本」――中身が同じ内容だったとしても、何かが違う。
その「何か」について、新井さんが教えてくれた。

電子上で作品を読むと、ほかのネットのニュースと同じように<情報>として読み流してしまいます。だから、読んでも頭に残りにくい

デジタル上で作品を読むと、<読んだ気になる>だけで、作品の内容が頭に残らないのではないか。
だからこそ、書店員としてNetGalleyを利用するときには、読んだ作品を頭のなかに残す必要がある。
そして、お客様のなかに残る本を提供していく。

NetGalleyの大きな特徴は、発売前の新刊のゲラを無料で読むことができることだ。
これは、出版業界や書店業界だけではなく、一般にも門戸が開かれている。

もちろん、誰でも利用できるわけではないし、その作品を「読みたい!」と思ってリクエストをしたら絶対に読めるというわけでもない。
ある人が新刊のゲラを無料で読んだあと、その作品が発売されてから書店で購入するかどうか。改めて購入することはなくとも、親しい知り合いに薦めることはあるかもしれない。
書店員でなくても新刊のゲラを読むことができるということは、書店にとってリスクなのかチャンスなのか。答えは、まだわからない。

新井さんは、1冊の本に対して、さまざまな思いを巡らせる。
その1冊のために、著者はどれほどの時間と労力をかけたのか、担当編集者や編集グループの方々がどれだけ力を注いだのか、携わったイラストレーターや写真家、営業の方々の思いなど――――。

1冊の本にはたくさんの人の思いが詰まっている。
新井さんは、お客様のなかに残る本を提供したいと考えている。

不便益っていう言葉があります。身銭を切ってでも本を買うとなれば、本と真剣に向き合うことになるでしょう。
お客様には、自分の宝物になるような本と出会ってほしいと願っています。そのための本屋さんで在りたい

新井さんは、「本屋さんごと好きになると、その本屋さんに行くようになる」とおっしゃった。
本屋さんを好きになってもらえるような工夫を凝らすために、NetGalleyを上手に利用できないだろうか。

NetGalleyで作品を読み、レビューを書くだけでなく、実践的に活用する方法。
「例えば明屋書店なら、書店の母体が《文芸担当者はNetGalleyに登録しなさい》と指示を出せば、明屋書店全店舗にNetGalleyユーザーが生まれます。NetGalleyで紹介されている作品のなかから《これだ》という作品を選び、全店舗の文芸書担当者に読むように指示すれば、全店舗でプッシュしていくことができるでしょう」

書店の形態や規模にもよるが、NetGalleyを使って全店舗で作品を押していくことができれば、その作品にとって非常に心強いはずだ。
NetGalleyの義務化は、どの書店でも可能というわけではないだろう。
しかし、実際の本屋さんで働く書店員として、作品を売り出すための先手を打つにはNetGalleyを必須にするのもアリなのかもしれない。

「紙の本」は、今では不便益の象徴なのかもしれない。
お金がかかる。重さがある。保管する場所をとる。
デジタルなら、お金はかからない。スマホは軽い。場所もとらない。

しかし、「紙の本」にかかる<手間>こそ、自分自身を振り返る時間になるのかもしれない。
新井さんは、「その人の思考や感情が本に宿って、可視化できるようになるんです」とおっしゃった。

本を買うときというのは、どんなときだろうか。
読みたい本、ほしい本がはっきりしていることもあるだろうが、漠然と「なんだかこの本いいな」と思って買うこともあるのではないだろうか。

「なんか気になる」

ほんのちょっとしたきっかけから、1冊の本と出会い、その本を読む。
その本を読んだあとに楽しい気持ちになったとしたら、楽しくなりたいときにはその本を読めばいい。
その本を読んだあとに迷いが晴れたなら、迷ったときにはその本を読めばいい。
新井さんは、人と本との関係を、そんなふうに語ってくれた。

ネットを作品との出会いのきっかけにして、「紙の本」に導く。
新井さんは、これからもお客様のなかで生き続ける本を提供するために、新井さん自身も楽しみながら、多くの本と出会っていくのだろう。

 

【インタビュー後記】

私は今までに何度となく引越しをしてきたけれども(昨年は3回引っ越しました)、本だけはどうしても捨てられない……!
毎回断捨離を敢行するけれども、「本だけは持っていく!」といってダンボール箱に詰め込むので、いつも重たい箱が出来上がる(。-_-。)
新井さんとお話していると、「本当に本が大好き」というのが伝わってきて、温かい気持ちになった。
ストイックで理系方面の知識も豊富な新井さんオススメの図鑑、もしも次に引っ越すことがあったら私のダンボール箱を重くしてくれそうな予感が……。

新井さん、明屋書店砥部店の皆様、インタビューにご協力くださりありがとうございました。

2018年2月7日 夏也園子

連載:NetGalleyのすすめ~書店員インタビュー記~
▶︎https://honya-trip.com/tag/netgalley/

 

夏也園子

1986年7月31日生まれ。
2014年『フェチクラス』(双葉社)でデビュー。
2017年に、尖端出版より『フェチクラス』の海外版(中国語版)が発売されている。
ほかに『リアルア ンケート(上・下)』(KKベストセラーズ)がある。
近頃は集中力アップと冷え対策のために、
入浴中にお絵かきロジック(ピクロス的なの)をしている。
あったかいルイボスティーに牛乳を入れて、
ルイボスミルクティーにして飲むのにハマり中♪

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