NetGalleyのすすめ【第8回】~「啓文社 ゆめタウン呉店」三島政幸さんインタビュー記~

お気に入りの作品を自主的に広めていくためのツール

今回は、啓文社ゆめタウン呉店にいらっしゃるNetGalley(ネットギャリー)ユーザー三島政幸さんにお話を伺った。

 

何年も前から、三島さんは出版社から送られてくるゲラを読む機会に恵まれていたそうだ。

しかし、たくさんのゲラのすべてに目を通すことが難しい場合もあったという。
せっかく出版社の方がゲラを送ってきてくださっているのに申し訳なくなることも少なくなかったことだろう。
ゲラの印刷にかかるコストがもったいないと感じることもあったという。

そのため、三島さんはもともと、「ゲラをネットで読むことができたらいいのに」と考えていらっしゃったそうだ。
この希望を叶えた形が、NetGalleyである。

三島さんは、2017年6月に開催された「もっとBOOKMAN2017」で、NetGalleyのことを知ったそうだ。

NetGalleyのメリットは、ゲラにかかる印刷コストの削減だけではない。
NetGalleyが現れるまでは、書店員は、出版社から送られてくるゲラを受け取ることが多かった。

つまり、ゲラを選ぶ機会が少なかった。

NetGalleyなら、書店員が「読みたい」と思う作品を選ぶことができる。
自分から気になる作品をピックアップすることができるようになったのだ。

また、NetGalleyならば、ちょっとした空き時間に作品を読むことができる。紙媒体だと短い時間で目を通すのが難しいことが多いが、NetGalleyの登場で、短い休憩中などに気軽に作品をチェックすることが可能になった。

しかしながら、同じ作品でも、ネットで読んだ印象と紙媒体で読んだ印象は異なる。
三島さんは、時間がたっぷりあるときには、紙のゲラに目を通すそうだ。

NetGalleyと紙のゲラを、時間の在り方によって使い分けることで、以前よりも有効に作品をチェックすることができるようになったのではないか。

三島さんは、NetGalleyをチェックしていると、出版後少し時間が経過している作品を見つけることがあるそうだ。

出版後もNetGalleyに掲載されることによって、書店員の方々に作品を広く認知してもらうことができるため、良い取り組みだと感じているという。

本屋大賞ノミネート作品のひとつに、『星の子』(今村夏子/朝日新聞出版)がある。
こちらの作品は、本屋大賞ノミネート作品が発表されたときも、NetGalleyで公開されていた。
書店員としては、本屋大賞ノミネート作品は読まなければならない。
作品が手元にない場合は買わなければならないなど、必要以上に気負いが生じることもあるだろう。

しかし、NetGalleyで公開されていれば、本屋大賞ノミネート作品が発表されたときに、すぐに作品を読むことができる。いち早く確認することができ、お気に入りの作品を見つけたらやはり購入するのではないだろうか。

『星の子』(今村夏子/朝日新聞出版)

三島さんは、NetGalleyで作品を読むことによって、仕入れの参考にしているそうだ。
「面白い」と感じた作品は、配本数を増やそうという気持ちになるという。

また、これまでのNetGalleyのすすめでもご紹介してきたとおり、NetGalleyでは、作品を読んだら出版社の方に直接感想をフィードバックすることができるという魅力がある。
この点に関して、三島さんは、NetGalleyでレビューを書いたり出版社の方に感想を送ったりするだけではなく、SNSなどを使って作品の良さを広めているという。

三島さんが注目した作品のひとつに、『風神の手』(道尾秀介/朝日新聞出版)がある。

『風神の手』(道尾秀介/朝日新聞出版)

三島さんは、『風神の手』を読んで「傑作だ!」と思ったそうだ。そして、すぐにネット上で多くの人に『風神の手』をおすすめした。その結果、かなりの読者が増えたそうだ(このことは、朝日新聞出版の方から直接聞いたという)。

↑『風神の手』の作者である道尾秀介さんご本人から、色紙が贈られたそうです。

 

これまで、NetGalleyのすすめでは、NetGalleyでは作品に直接レビューを送ることができるというメリットを挙げてきた。三島さんの取り組みは、NetGalleyで作品をチェックし、NetGalleyの外側に作品の良さを広めていくものだと感じられる。

NetGalleyの内側で発売前の作品を盛り上げるのみではなく、NetGalleyの外側でも盛り上げる。

作品を読んでみて、良かったらみんなに拡散します!

これは、作品にとって非常に心強い応援になるだろう。

 

 

NetGalleyの魅力として、他にも、ふだん読まないジャンルの作品を「ちょっと読んでみようかな」という気持ちになるという点がある。

三島さんは、NetGalleyで化学同人の『時空のさざなみ』(ホヴァート・シリング著)という作品を見つけて読んだそうだ。
啓文社ゆめタウン呉店の場合、書店の規模的に、仕入れをすることができる作品は限られている。そのため、専門性の高い本のなかには、仕入れることができない作品も出てくる。

NetGalleyならば、仕入れの段階で選択肢に入っていなかった作品でも、書店員が気になったらチェックすることができる。
もしかしたら、それで仕入れの選択肢に入ることもあるかもしれない。

『時空のさざなみ』(ホヴァート・シリング著/化学同人)

 

三島さんいわく、実用書のゲラが送られてくることは少ないという。
NetGalleyでは、さまざまなジャンルの作品が進出していくと良いのではないかと感じられているそうだ。

書店員が、それまであまり読んでいなかったジャンルの本を読むきっかけが増える。
また、三島さんは、書店員が関わっている本がNetGalleyで紹介されていることも好ましく感じているそうだ。

書店員の作品が同業者にこそ伝えられ、拡散していくのは素晴らしいことだ。
これからも、NetGalleyをきっかけとして、書店員が気に入った作品を自主的に広めていくというブームが巻き起こると、本屋業界が一層盛り上がるのではないだろうか。

 

【インタビュー後記】

啓文社ゆめタウン呉店のお客さんは、ファミリー層が多く、キッズコーナーがとっても充実しています!

店内をぐるりと見て回って一番気になったのは、見本!
キッズやマンガだけでなく、写真集のような本にも見本があり、気軽に手を伸ばせるのは嬉しい(*´∀`*)


他にも私が「いいなあ」と思った棚や、出版社さんといっしょに行われていると思われる仕掛けを写真でご紹介していきますo(^▽^)o

他にも見所はいっぱいあるので、皆さんも是非ぜひ足を運んでみてくださいね☆彡
三島さん、啓文社ゆめタウン呉店の皆様、インタビューにご協力くださりありがとうございました。

2018年5月11日 夏也園子

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NetGalleyのすすめ~書店員インタビュー記~
▶︎https://honya-trip.com/tag/netgalley/

 

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夏也園子

1986年7月31日生まれ。
2014年『フェチクラス』(双葉社)でデビュー。
2017年に、尖端出版より『フェチクラス』の海外版(中国語版)が発売されている。
ほかに『リアルア ンケート(上・下)』(KKベストセラーズ)がある。
近頃は集中力アップと冷え対策のために、
入浴中にお絵かきロジック(ピクロス的なの)をしている。
あったかいルイボスティーに牛乳を入れて、
ルイボスミルクティーにして飲むのにハマり中♪

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