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子供の将来のために大人のできることとは?!
今回は、これから子育てをされる方、子育て中の方、または、教育に携わる方におすすめの本を一冊紹介します。
最近、子どもの将来のためには、これまで重視されてきたIQや学歴といった認知能力よりも重要だということが明らかになってきた「非認知能力」について、理解した上で実際にどうするべきかを学べる『私たちは子どもに何ができるのか』を紹介します。
この本は、同じく子どもの将来のために出来ることを科学的に解き明かそうとした『成功する子 失敗する子』の著者でもあるポール・タフさんの著書で、彼はフリーのジャーナリストで、子どもの貧困と教育政策を専門に多数の執筆と講演活動をされていて、そんな彼が、この本では子どもたちの非認知能力について、親として大人として、そして、社会として何ができるのかということを掘り下げてくれています。
「非認知能力」
まず、この 非認知能力とは、ひとつのことに粘り強く取り組む力や、内発的に物事に取り組もうとする意欲のこと で、いわゆる「やり抜く力」「好奇心」「自制心」といった、科学を学んでいる方でなくてもある程度人生を経験された方であれば、なんとなくでもそれが人生を左右する力であることを感じることの出来る力のことです。
この非認知能力は、読み書きや計算のように親や先生が教えて身につくものではなく、大人や社会が作る環境により子どもの中で育まれるものだということが分かってきています。
この本で冒頭の前書きで触れられていることですが、日本の皆さんに知っておいて欲しいことがあります。それは、世界各地で行われた貧困問題への意識調査から見て取れる日本の状況です。
「自力で生きていけないようなとても貧しい人たちの面倒を見るのは、国や政府の責任である」
この意見について、皆さんはどう思いますか?
これに対して、「そう思わない」と答えた人は…
中国:9%
イギリス:8%
ドイツ:7%
アメリカ:28%
そして、日本は…38%です。
28%のアメリカは、貧困率が日本の4倍近い50%という状況にあり、長年にわたり対策に取り組んでいますが、貧困に対して自己責任だと見て見ぬ振りをして結果、さらに子どもたちの貧困が蔓延しさまざまな社会問題へと波及しています。そのアメリカと同じ状況に日本は突き進んでいると言えます。
これを食い止めて、確かな対策を行うには、ただ子どもたちの貧困に目を向けて、教育にお金と労力を費やせばいいという事ではないとこの本は科学的根拠をもとに示してくれています。
親として、大人として、社会として、子どもたちのためにできることを!
幅広くさまざまな研究をもとに、家庭でできること、教育現場でできること、そして、社会として取り組むべきことと紹介されていますので、読んだ方がそれぞれの立場で読んだその日から出来ることがその判断基準とともに紹介してくれています。
子どもが家庭で癇癪を起こしたとき、衝動をコントロールできず親の望む行動をしてもらえない、あるいは、して欲しくない行動をしていまう時、教育の現場で、どうしても思うような対応が出来ず大人の作った評価基準から逸脱する子どもたちが増えてしまった時、あるいは、そんなさまざまな問題を子どもたちにそもそも抱えて欲しくないと考えている時、そんな時に、実際に何ができて、子どもたちへの対応はどうすべきで、環境はどう整えればいいのかという具体的な答えは書かれていませんが、その瞬間瞬間に子どもたちの心理の中で何が起きていて、その結果どんな可能性がその先にあるのかということを豊富な研究結果をもとに紹介してくれています。答えそのものはなくても、我々大人が考え向き合うことが出来る指標を示してくれます。ぜひ手に取り読んでみてください。