【第2回】櫻井店長の必殺技!なんしょん、ちょっとずるいぞ?
今回は、「なんしょん、ちょっとずるくね?」と、ほかの本屋さんから聞こえてきそうな櫻井恭子店長の必殺技をご紹介しよう。
今から約2年前に出版された『コーヒーが冷めないうちに』(川口俊和:著/サンマーク出版)という本がある。本屋大賞にもノミネートされたベストセラー小説なので、ご存知の方も多いだろう。
櫻井店長は、『コーヒーが冷めないうちに』を「面白い!」と思ったので、出版早々に仕掛けた。1辺1メートル弱の正方形のテーブルに、コーヒー豆やミルなどといったコーヒーグッズで装飾して、『コーヒーが冷めないうちに』コーナーを作ったのだ。
しかし、仕掛けた当初の反応はぼちぼちであったという。そこで櫻井店長は、OHKという岡山民なら誰でも知っている放送局の、「なんしょん?」という番組で『コーヒーが冷めないうちに』を紹介したのだ。すると、爆発的に売れたという。
さて、まさに「なんしょん、テレビとかそんな手ぇ使えるんじゃったら売れるに決まっとるが」という声が聞こえてきそうだが、どうやらそういうわけでもないらしい。
テレビで宣伝しても、売れる本と売れない本が存在する。売れる本の特徴は、読み手を選ばない本だと、櫻井店長は感じている。いわゆる、間口の広い本だ。
反対に、テレビで宣伝しても売れない本とは、間口が狭くマニアックな内容の作品である。つまり、読み手を選ぶ本だ。この売れる売れないとは、残酷なまでに数字に表れるという。
テレビを使っても使わなくても、売れる本は売れるし、売れない本は売れないということになる。ならば、どんな本屋さんでも行うことができる販売戦略はないか、櫻井店長に訊いてみた。
前回、本屋さんのメインストリートの話をした。櫻井店長は、メインストリートに配置した本の売れ行きを1週間ごとにチェックしているという。
動きが悪ければ、1週間で配置を変えるそうだ。本の販売戦略として、メインストリートに売りたい本を配置するということは、どの本屋さんでも行うことができる工夫である。
そして、本の売れ行きをこまめにチェックし、配置をどうするかスピーディに判断していくことも、「なんしょん?」に出演しなくてもとれる戦略だ。
ここでもうひとつ、本屋さんならではの悩ましい声が聞こえてきそうだ。「そうはいっても、未来屋さんのような大きい本屋さんなら、売れ行きのいい主流の本がたくさん入ってきやすいじゃろう。販売戦略も立てやすかろうて。じゃけど、小さなまちの本屋さんは主流の本が入ってきにくいんじゃ。まちの本屋さんは後回しにされとるが」
この問題についても、櫻井店長から興味深い話を聞いた。それについては、次回ご紹介しよう。
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夏也園子
1986年7月31日生まれ。
小説マンガゲーム好きで基本雑食。
最近はなにも読めていない・できておらず(涙)
2014年『フェチクラス』(双葉社)でデビュー、
ほかに『リアルアンケート(上・下)』(KKベス トセラーズ)がある。
最近はホラーだけでなく別ジャンルにもチャレンジ中&新たに本を出版すべく奮闘中。
☆2017年『大原美術館とあなたが紡ぐ物語~小川洋子がいざなう朗読会Ⅲ』にて入賞しました。
https://www.ohk.co.jp/ohara/