NetGalleyのすすめ【第10回】 ~ 「文信堂書店長岡店」實山美穂さん インタビュー記~

「NetGalleyのすすめ」再開!
NetGalley(ネットギャリー)を利用している書店員さんをインタビューするこの企画。今回ご登場いただくのは、新潟県の文信堂書店長岡店の實山美穂さんです。いつもレビューを書いて、SNSで発信してくださる實山さんには、お聞きしたいことが盛り沢山!普段は女性作家さんにインタビューを依頼しているこの企画ですが、今回はNetGalley担当の藤吉(男性)がお伺いし、インタビューをさせて頂きました。

JR長岡駅の駅ビルCoCoLoにある文信堂書店長岡店

藤吉:どうぞよろしくお願いいたします!さっそくですが、まずは文信堂書店について、教えてください。

實山:文信堂書店は新潟市の東万代町に本店があって県内に4店舗を構えております。新潟関連書籍の品揃えに力を入れており、一部の店舗では新潟出身作家コーナーがあるのも特徴です。

藤吉:こちらの長岡店は駅ビルにあって抜群の立地ですよね。私は長岡駅に来たのは初めてでしたが、迷わずすぐに来れました!

實山:新幹線の改札からも遠くないですからね(笑)。

藤吉:こちらのお店は、どのような客層なのでしょうか?

實山:朝は近隣の年配のお客様で混み合うことが多いです。夕方からは通勤通学のビジネスマンや学生にも来店頂けています。

藤吉:幅広い年代のお客さんが来られるんですね。

實山:おかげさまで、本の取り扱いも幅広くなるので、本を扱う側としては楽しいですよ。

▲郷土本コーナーは、季節に合わせた飾り付けを行なっており、来店された作家のサイン色紙も展示している。新潟出身作家が話題になるとテレビ取材が入るほどの品揃えだ。

▲クリスマスや年末年始は大忙しだったという児童書コーナー。ノラネコぐんだんの手編みぬいぐるみをご自身で作って売り場に飾り付けするほど、實山さんは工藤ノリコさんの大ファンである。

ネットギャリーとの出会い

藤吉:實山さんは、どのジャンルをご担当されてらっしゃるのですか?

實山:ここでは、一人のスタッフがいくつかのジャンルを担当しています。自分も文芸、ビジネス、人文、資格などたくさんありますね。それにここ最近では「読む」という担当にもなっています。

藤吉:「読む」ですか?

實山:読んで良かった本をそのジャンルの担当者に勧めたりしています。絵本やコミック、新書や人文、何でも読みますが、ほとんどはただの趣味です(笑)。

藤吉:趣味!?

實山:はい。逆に趣味じゃないと、こんなにたくさんの本を読み進めることはできないと思いますよ?

藤吉:なるほど!長岡店での目利き役ですね!その「読む」の中には、ゲラ読みも含まれていますか?

實山:そうですね。本屋大賞にエントリーするようになって以来、出版社からゲラをいただけるようになりました。ネットギャリーのゲラも読みます。

藤吉:ネットギャリーを知ったきっかけは何でしたか?

實山:遠田潤子さんの『オブリヴィオン』がネットギャリーに掲載されているという案内を光文社さんからいただき、「へぇ~、無料で使えるこんなサービスがあるんだ!」と思ったのが最初でした。でも当時は、店頭でゲラを読む時間もなく、しばらくは使ってなくて……。店舗の改装でパソコンが使えなくなった時期があって、そのタイミングでタブレットを導入しました。そのときに、「そういえば!」とネットギャリーの存在を思い出して、改めて使い始めました。

藤吉:最初にネットギャリーで読んだ本はどのタイトルでしたか?

實山:『4歳の僕はこうしてアウシュビッツから生還した』です。「2018年で読んだ本ベスト3」という寄稿を依頼されて、そのうちの1冊にも選びました。昔からノンフィクションや手記はよく読んでいますが、この本はネットギャリーをやっていて知ることができた作品です。

▲『4歳の僕はこうしてアウシュヴィッツから生還した』
(マイケル・ボーンスタイン/デビー・ボーンスタイン・ホリンスタート 森内薫訳 /NHK出版)

藤吉:ネットギャリーを使い始めてから、實山さんの中で何か変化はありましたか?

實山:年間刊行点数が多すぎて、本の存在自体を知らないことがどうしてもでてきますが、ネットギャリーで本を知る機会が増えました。1つのWEBサイトをプラットフォームとして多くの出版社が利用してる利点ですよね。入荷して本を並べているときに、「この本、ネットギャリーに載っていたなぁ。読んでおけばよかった…。」という後悔を抱くこともよくあります。掲載作品が増えてきているので、「そういえばこの本も!この本も!」って思うことも(笑)。

藤吉:かなりネットギャリーを意識されておられる?

實山:なんと言っても気軽に手元で読めますからね。店に在庫があるから書店員はいつでも本が読めると思われるかもしれませんが、そもそも店頭の本はお客様に販売する商品なので、読むことはできません。文芸に限らず、児童書や実用書、ビジネス書に絵本までゲラが読めるネットギャリーはとても役立っています。

紙のゲラも、電子のゲラも、どちらも読む

藤吉:ネットギャリーは興味のあるゲラを自分で選べて、端末で閲覧できます。そのあたりの仕組みについてはいかがですか?

實山:ネットギャリーを使うまでは、タブレットで読書したこともないですし、電子で読むということに対しても正直あまり良い印象はありませんでした。でも自分が読むペースで本を買っていたら、財布が大変なことになりますし(笑)、家に全部の本を置くスペースはありません。端末に収納できることは電子のいいところだと思いました。ただし、紙のゲラだと残りが何ページかが、手に触ってわかります。そういったところは紙のゲラの方が良いときもあります。

藤吉:紙のゲラ、ネットギャリーのゲラ、どちらも読むことになって大変じゃないですか?

實山:大変ですが、どちらにも感想を送っています。どちらにも送ることで、一人でも多くの出版社に自分のことを知ってもらえるし、文信堂のことも知ってもらえます。知ってくださる方が増えると、自分のコメントをPOPや広告に使っていただけるチャンスも増えますし、さらに仕入れにつなげることもできます。ネットギャリーにレビューを投稿して、WEB上にレビューを広げることで、作家さんにも直接見てもらえることもあります。

藤吉:レビューを出版社に届けることで広がることがありますよね。

實山:名前と一緒にレビューを本の帯へ載せてもらったときは、お客様から反応を頂けます。レジで「これ、あなたですか?」と声をかけられることもあり、そこからまたお客様との会話が生まれます。

業界紙をネットギャリーで読む

藤吉:ずっと實山さんにお聞きしたかったことがあります!文化通信社が発行している書店マーケティング月刊情報誌『B.B.B.』を毎号ネットギャリーで読んで、レビューも投稿し、さらにTwitterでレビューを広げてくださっています!

實山:毎月楽しみにしているんですよ!現場の方は読んだ方がいいと思います。知っておいた方がいい情報はたくさんありますし、そこで商品を知ることもあります。仕掛け販売のきっかけにもなりますし、作家さんのインタビューには、最後に必ず「これからの本屋をどう思いますか?」って必ず聞いてらっしゃいますよね?そこはいつも注目しています。リアル書店を応援してくれるコメントを見たとき、私もその作家さんを応援したいという気持ちになります!

藤吉:文化通信社さんも實山さんの熱心なレビューに感激されております。書店員の生の声をもっと聞きたいとおっしゃっておりました。

實山:読んだ感想を書いているだけですよ(笑)

藤吉:それが作家さんや編集者のエネルギーになりますから!そのほか、レビュー投稿について印象深いことはありましたか?

實山:3月に発売予定の池上彰監修『なぜ僕らは働くのか』で、レビューを投稿したら巻末に名前が載るっていう参加型の企画は面白いなぁと思いました。表紙も選ぶようになっていて、自分だったら…っていう視点で楽しめましたし、他にもタイトル募集といった企画もありました。そのような企画は、ゲラを読むモチベーションになりますし、その作品への愛着にも直結しますので、どんどんお願いしたいです(笑)

藤吉:また企画をご提案いたしますので、ぜひご参加ください!本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!

實山:こちらこそ、新潟まで来ていただいてありがとうございました。

▲書店マーケティング月刊情報紙『B.B.B.』文化通信社発行
NetGalley会員になると読むことができる。

『なぜ僕らは働くのか』 (池上彰監修/学研プラス)
参加型のレビュー投稿企画で多数のフィードバックが集まった。

 

▲昨年6月に創刊された文芸レーベル・ことのは文庫。右側に平積みしている『花咲く神楽坂~謎解きは香りとともに~』(じゅん麗香/マイクロマガジン社)は、お花屋さんが舞台ということで、お花と一緒に展開。作品の内容に沿った飾り付けは、「読む」担当だからこそできる職人技である。

年6月に発売された本屋大賞ノミネート作品『線は、僕を描く』(砥上裕將/講談社)
同一装丁作家の『極彩色の食卓』(みお/マイクロマガジン社)もPOPをつけて展開。2冊同時に購入頂けるとのこと。

インタビュー後記

實山さんは、ご自身で買った本、図書館で借りる本、紙のゲラ、ネットギャリーのゲラ、とにかくジャンルを問わず、たくさんの本を読む書店員さん。「5冊選書をするということは、5冊以上読んだうえで、5冊選ぶということですから」とおっしゃったことはとても印象的でした。

レビューを書く秘訣をお聞きしましたが、とにかく数をこなして慣れることだそうで、長くご経験されている實山さんでも、未だに納得できるPOPを作れたことがないと言い、読んでは書いてを日々繰り返しているという。

そんな熱心な書店員と出版社をおつなぎできるように、これからもNetGalleyは、頑張ってまいります。實山さん、文信堂書店長岡店のみなさん、ありがとうございました!

【文信堂書店 長岡店】

新潟県長岡市城内町1−611−1 CoCoLo長岡 M2F
TEL:0258-36-1360
営業時間:10:00~20:00
定休日:2月・9月 年2回休館日

連載:NetGalleyのすすめ~書店員インタビュー記~
▶︎https://honya-trip.com/tag/netgalley/

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