【第3回】その本屋さんだからできる!人と本をつなぐ
未来屋岡山の櫻井恭子店長が尊敬している人のひとりに、田口幹人氏がいる。
田口氏は、約2年前に『まちの本屋』(田口幹人:著/ポプラ社)を出版している。
櫻井店長は、この本をスタッフ全員にすすめて読んでもらっているそうだ。『まちの本屋』を読むと、櫻井店長がスタッフに「この本を読んでほしい」という理由がよくわかる。そこには、本を売るノウハウだけでなく、書店員としての大切な姿勢が書かれているからだ。
田口氏も述べているが、人間の身体でたとえるなら、まちの本屋さんは「毛細血管」であり、未来屋岡山のような大きい本屋さんは「動脈や静脈」のようなものだという。
未来屋岡山のような大きい本屋さんは、たしかに、主流の本を仕入れやすい。しかし、大きい本屋さんにも弱点がある。それは、常連さんの顔をなかなか覚えられないということだ。反対に、まちの本屋さんには、昔からなじみの常連さんがいるはずだ。まちの本屋さんだからこそ、常連さんの好みや必要としていることをよく把握して、その人にとってぴったりの本を紹介してあげることができる。まちの本屋さんには、たしかに、主流の本が入ってきにくいという問題点がある。だが、大きい本屋さんにはない、常連さんとしっかり絆を築くことができるという強みがある。
櫻井店長は、大きい本屋さんとまちの本屋さん、それぞれ役割分担を行えばいいのではないかと考えている。
今、この記事を読んでいるあなたは、どんな本が読みたいだろうか。今流行中の本を読みたいなら、未来屋岡山などの大きい本屋さんに行ってみるといいだろう。
そうではなく、たとえば、「昔見ていたアニメの原作本がほしいけど、もう古い本だから大きい本屋さんでは見つけられない」というときには、まちの本屋さんに相談してみてはいかがだろうか。きっと力になってくれるはずだ。
櫻井店長に、「書店員とはどういう存在なのか」という質問を、直球でぶつけてみた。
櫻井店長の答えは、
「お客様と本をつなぐ人」
だった。
櫻井店長は、「自分が紹介した本でお客様に喜んでもらいたい」という。お客様にとってぴったりな本が見つかることは、書店員にとって大きな喜びになる。
ある本は、Aさんにとってはとてもいい本だが、Bさんにとっては合わないことがある。櫻井店長いわく、書店員とは、AさんがAさんにとっていい本と出会えるように、BさんがBさんにとっていい本と出会えるように「出会い」を生み出す存在なのだ。
この「人と本をつなぐ」方法は、大きい本屋さんとまちの本屋さんで異なるはずだ。それぞれの本屋さんにしかできない、特別な方法があるはずなのである。書店員は、その方法を考えて実行していくことが大切ではないか。
大きい本屋さんとまちの本屋さん、それぞれにしかできない役割を果たしながら、共存していく。それが、本屋さんの明るい未来を作っていくことになる。
自分にとって特別な本と出会えることは幸せだ。その幸せを、書店員は誰かにプレゼントする可能性を持っている。
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未来屋書店 岡山店
未来屋書店 岡山店 〒700-0907 住所 岡山県岡山市北区下石井1-2-1 イオンモール岡山5F (キッズ書籍4F) TEL 086-803-5571 営業時間 10:00~21:00 定休日 ...
夏也園子
1986年7月31日生まれ。
小説マンガゲーム好きで基本雑食。
最近はなにも読めていない・できておらず(涙)
2014年『フェチクラス』(双葉社)でデビュー、
ほかに『リアルアンケート(上・下)』(KKベス トセラーズ)がある。
最近はホラーだけでなく別ジャンルにもチャレンジ中&新たに本を出版すべく奮闘中。
☆2017年『大原美術館とあなたが紡ぐ物語~小川洋子がいざなう朗読会Ⅲ』にて入賞しました。
https://www.ohk.co.jp/ohara/