(写真は戸田書店静岡本店さまの「書店員の仕事」)
【第3回】本屋さんはそれでも再生する
『書店員の仕事』を読んでいると、閉店した本屋さんの書店員さんの記事がいくつか出てくる。
そう、いくつか。1店ではなく、何店舗か出てくるところに、書店業界の苦難が垣間見える。
『書店員の仕事』の第4章では、東日本大震災特別篇がまとめられている。『書店員の仕事』を読んで、震災を直に経験しながら、書店員さんたちはなにをしていたのかを知った。
書店員さんたちは、みんな、自分の本屋さんを心配していたのだ。そして、本屋さんの復旧に奔走していた。
震災が起こったあと、本屋さんにお客さんが来る様子を、被災地にいない自分には想像できなかった。けれども、いたのだ。震災でさまざまな電子機器が使えなくなり、アナログに立ち返った人々は、本を求めた。
情報収集のためだけではない。つらい現実から一時目をそらし、心に安らぎを与えるために本を読む。
『まちの本屋』(田口幹人:著/ポプラ社)でも、震災時に本が求められたことが書かれていたことを思い出す。
『書店員の仕事』には、書店員さんたちの実にさまざまな経験が書かれている。書店員さんたちの熱い思いが存分に伝わってくる。
現役書店員さんが読めば、「うんうん」と同意することもあれば、「いや、自分はこう思うね」と反論することもあるかもしれない。そんなふうに自由に読みながら、書店員さんたちに楽しい本屋さんを作り上げてほしい。
いち本屋さん好きとして、心からそう思う。
最後に、『書店員の仕事』の見所として、各記事の最後についている、書店員さんのインタビューを担当した安喜健人氏と天摩くらら氏のコメントを挙げたい。
主に天摩氏がコメントを寄せているが、このコメントを見ると、記事を書いた書店員さんのお人柄がさらによく伝わってくる。その書店員さんに会いに、その本屋さんに行ってみたくなる。
現役の書店員さんだけでなく、学生さんやビジネスマンなど、多くの方にこの本をおすすめしたい。本棚を見る目が変わるはずだし、もっと本屋さんを楽しむことができるようになるだろう。
『書店員の仕事』紹介記事後記
『書店員の仕事』を読むのは、時間がかかった。
ひとつひとつの記事から、その人の人生が伝わってくるからだ。ひとつの記事を読んでは、「はぁ……」となんともいえないため息を吐いたり、涙したり、笑顔になったり。
けっこう大変だったのだ。そのくらい、読み応えがある本なんだよって言いたい。
NR出版会さまや、山本千紘さんから、「『書店員の仕事』から引用してかまいませんよ」と温かいお言葉をいただいていたのだけど、いや、引用していたら大変なことになるなと。なにせ、今私の手元にある『書店員の仕事』は付箋だらけなもので(汗)
引用だらけになったら、本体の意味が……!
うーん、でもせっかくなので、ひとつだけ。
本当はひとつじゃないよ、本当にたくさん心に刺さった言葉や情報があるのだけど、ひとつだけ。これこそ、今、書店員さんたちが考えることなんじゃないかって思った言葉をご紹介しよう。
『書店員の仕事』の132ページ、井谷晋弥さんが書かれた言葉。
「あえて時間を費やして、書店に足を運んでもらうためにはどうすればよいか。
それは、リアル書店ならではの「体験」を味わえるような売り場を作ることではないでしょうか。」
最後になりましたが、『書店員の仕事』について記事を書くことを快諾してくださったNR出版会さま、丸善岡山シンフォニービル店さま、山本千紘さん、本屋さんTRIP編集長、ありがとうございました。
どんなふうに紹介しよう――。 『書店員の仕事』(NR出版会)を読み終えて、頭を抱えた。 書評なんて立派なものは書けないし、ただの感想文になってもいけない。ただ、この『書店員の仕事』という本の魅力を伝えたい。この本の持つ圧倒的な「人の力」を伝えたい。 その一心で、この番外編を書かせて...
【第2回】『書店員の仕事』を読むともっと本屋さんが面白くなる 『書店員の仕事』は、4章構成の本だ。 2009-2010年、2010-2013年、2014-2017年、そして2014-2017年(東日本大震災特別篇)と、第1章から3章までは各年代ごとに書店員さんから寄せられた記事をまとめた内容...
(写真は戸田書店静岡本店さまの「書店員の仕事」) 【第3回】本屋さんはそれでも再生する 『書店員の仕事』を読んでいると、閉店した本屋さんの書店員さんの記事がいくつか出てくる。 そう、いくつか。1店ではなく、何店舗か出てくるところに、書店業界の苦難が垣間見える。 『書店員の仕事...
夏也園子
1986年7月31日生まれ。
小説マンガゲーム好きで基本雑食。
最近はなにも読めていない・できておらず(涙)
2014年『フェチクラス』(双葉社)でデビュー、
ほかに『リアルアンケート(上・下)』(KKベス トセラーズ)がある。
最近はホラーだけでなく別ジャンルにもチャレンジ中&新たに本を出版すべく奮闘中。
☆2017年『大原美術館とあなたが紡ぐ物語~小川洋子がいざなう朗読会Ⅲ』にて入賞しました。
https://www.ohk.co.jp/ohara/