【第2回】『書店員の仕事』を読むともっと本屋さんが面白くなる
『書店員の仕事』は、4章構成の本だ。
2009-2010年、2010-2013年、2014-2017年、そして2014-2017年(東日本大震災特別篇)と、第1章から3章までは各年代ごとに書店員さんから寄せられた記事をまとめた内容に、そして第4章は東日本大震災に関わる記事をまとめた内容になっている。
今回は、第1章から第3章までの書店員さんの声について、ほんの少しご紹介したい。
まず、どの書店員さんもとにかく個性的だ。
考え方もさまざまで、とある書店員さんとは真逆の意見を述べている書店員さんがいることもある。
共通点といえば、本への愛はもちろん、棚作りへのこだわりだろう。各書店員さんの、魅力的な棚作りとはなにかを探求する心には敬服する。
お客さんから見たときに、面白い棚とはなにか。
『書店員の仕事』を読んでいると、人文書担当の書店員さんや大学構内の書籍販売を行っている書店員さんの記事が出てくる。そもそも小難しく見える本を、どうしたら興味を持って手にとってもらえるだろうか。書店員さんの悩みは尽きない。
しかし、『書店員の仕事』を読んでいる側としては、書店員さんは棚作りに苦悩する一方で、それを楽しみにしているように感じられた。
面白い棚というものに正解はない。
どの本屋さんも客層が違うし、必要とされる本も違う。もっといえば、お客さんひとりひとり、求めている本が違う。だけれども、お客さんにとって一生ものとなるかもしれない本を紹介するには、魅力的な棚作りが求められるのだ。
この棚作りに対する話は、どれも面白い。
棚作りとは、本の見せ方だ。言い換えれば、商品の見せ方である。
本屋さんでなくとも、販売業やほかの業種であっても「商品・サービスの見せ方」は必ず考えるものではないだろうか。試行錯誤を繰り返しながら、お客さんに「商品・サービス」をアピールしていく。その姿勢もまた、『書店員の仕事』から学ぶものがあるかもしれない。
『書店員の仕事』を読むと、書店員さんの特権も見えてくる。
なんといっても、「売りたい本」を選ぶことができるのだ。売りたい本を、どう見せて、どう売るか。やり方も考え方もさまざまだ。
ちなみに、これは私個人の感想になるが、66~69ページの甲斐裕さんや81~84ページの市岡陽子さんの話が興味深い。
うちの書店は、うちの書店のやり方でいく!
各本屋さんには、それを貫いてほしいと、勝手ながら思う。客目線としては、そんな本屋さんの個性が楽しいのだ。
あ、この店はこんなレイアウトしてる
ここにはこんな本まで仕入れてある
ここはこの系統の本が充実しているぞ……
いろんな本屋さんがあるから、本屋さんめぐりをしたくなる。『書店員の仕事』は、その思いを一層強めてくれる本だ。
今回のラストに、どうしても山本千紘さんの記事(202~205ページ)について触れておきたい。千紘さんはほんわかしているけれど、芯のある方だ。本屋さんへの情熱も生半可なものではない。
千紘さんの記事では、日本で出版された本が海を渡り、ブラジルで大切に読まれていることが書かれている。ブラジルにいる日系の方々が、日本への想いを忘れず後世につないでいくために、日本で出版された本を大切にしているのだ。
本は人の心の支えになる
本がなくても、確かに、衣食住には困らない。けれども、人生を豊かに送ろうと思ったら、心を大切にしなくてどうなるというのだろう。
本は人の心の支えに――それは、次回、東日本大震災特別篇とともにもう少しお話ししたい。
どんなふうに紹介しよう――。 『書店員の仕事』(NR出版会)を読み終えて、頭を抱えた。 書評なんて立派なものは書けないし、ただの感想文になってもいけない。ただ、この『書店員の仕事』という本の魅力を伝えたい。この本の持つ圧倒的な「人の力」を伝えたい。 その一心で、この番外編を書かせて...
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夏也園子
1986年7月31日生まれ。
小説マンガゲーム好きで基本雑食。
最近はなにも読めていない・できておらず(涙)
2014年『フェチクラス』(双葉社)でデビュー、
ほかに『リアルアンケート(上・下)』(KKベス トセラーズ)がある。
最近はホラーだけでなく別ジャンルにもチャレンジ中&新たに本を出版すべく奮闘中。
☆2017年『大原美術館とあなたが紡ぐ物語~小川洋子がいざなう朗読会Ⅲ』にて入賞しました。
https://www.ohk.co.jp/ohara/