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刺激的な読書がしたいなら江戸川乱歩を読むべし!
退屈な読書はしたくない方。極上のエンターテイメントを味わいたい方。
独特な世界観を堪能したい方。普通の読書に飽きてしまった方。
そんな方におすすめなのは、江戸川乱歩の作品です。
「江戸川乱歩ってなんだか難しそう」
いいえ、実はちっとも難しくありません。
乱歩の小説は娯楽小説としての側面も強いため、文学の中では比較的読みやすい部類です。
一度乱歩の小説を読めば、刺激的な面白さに心奪われることでしょう。
今回は、そんな江戸川乱歩のおすすめ作品を紹介します。
乱歩の趣味全開!江戸川乱歩ワールド
読書を愛する人ならだれもが耳にしたことある作家・江戸川乱歩。
え?ミステリの作家でしょ?私ミステリ興味ないし…。
そんな声も聞こえてきそうです。
たしかに、江戸川乱歩と言えば探偵小説。
張りめぐらされた謎に難解なトリック…。
「難しい」というイメージを持つ方も少なくありません。
しかし、 実は探偵小説だけが乱歩ではない のです。
江戸川乱歩は自分の趣味嗜好を、小説の中にふんだんにちりばめている作家でもあります。
これ本当に出版できたの!?という かなりギリギリなネタが盛りだくさんのエンターテイメント ……。
それが、江戸川乱歩のもう一つの側面です。
「お硬いミステリ」なんて印象を持って遠ざけていたら勿体ない!
ドキドキして刺激的な乱歩の世界に、みなさんをご案内します。
それでは早速、江戸川乱歩のアングラな世界観が楽しめるおススメ小説を紹介します。
江戸川乱歩のおすすめ小説
『D坂の殺人事件』
あらすじ
主人公の「私」は行きつけのカフェから古本屋を見ていました。そこでは、彼が最近知り合った探偵・明智小五郎の幼馴染の女性が働いています。
しかし、ある日明智と私が古本屋を訪れると、その女性が首を絞められて殺されていたのです。
彼女の死の裏には、一体何があったのでしょうか。
*
明智小五郎シリーズの一作目。名探偵・明智小五郎は、ある女性の殺人事件に挑みます。
いきなり探偵小説!と思われるかもしれませんが、この作品は単なるミステリにとどまりません。
犯人の予想外の動機に驚く人も多いはず。
後の乱歩に見られるグロテスクな描写も少ないため読みやすいのもポイントです。スラスラと読めるので、気が付いたら読み終わっているでしょう。
乱歩の世界観を知るのにぴったりで、初めて乱歩に触れる方にもおすすめの作品です。
『人間椅子』
あらすじ
ある椅子職人の男は、椅子の中に人間が入る「人間椅子」として生活することにはまってしまいます。人間椅子は若い婦人の家に運び込まれ、男は椅子ごしに感じる感触に溺れますが…。
*
人間椅子というタイトルを一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
江戸川乱歩の中でも有名なこの作品。人間の狂気を描いた作品ですが、同時に幻想的でもあります。
探偵小説が得意ではない人でも、楽しんで読めるでしょう。
主人公の狂気はまさにマニアックといっていいもの。しかし、彼の狂気はただ「気持ち悪い」だけではなく、どこか「人間の本性」を抉り出すようなものです。
オチまで飽きさせず、とても面白いのも魅力的!
20分ほどで読める短編なので読みやすい です。江戸川乱歩を初めて読む人は、こちらもおすすめです。
『人でなしの恋』
あらすじ
京子は町の名士である美男子・門野に嫁入りします。彼は京子に優しくしてくれる一方で、変人という噂もありました。幸せな結婚生活。しかし、その幸せも長くは続きませんでした。自分を愛してくれるはずの門野に対して、違和感があるのです。その違和感を調べるために、京子は門野のあとをつけていきます。そこで、京子が目にしたものとは…。
*
江戸川乱歩のホラー小説の仲でも代表的な作品です。
描いているテーマは、「人形愛」。
人形という無機物に恋してしまう人間を描いた物語です。
物語の主人公である門野が持っているそれは「人とは違う」という性質です。人間はみんな「人とは違う」部分を持っているため、一見異常な門野に深い共感すら覚えてしまうのではないでしょうか。
特殊な人間を描いているようで、実は等身大の人間を描いた作品でもあります。
『芋虫』
あらすじ
須永中尉は戦争により、両手両足を失ってしまいます。そんな須永中尉を献身的に介護する妻の時子。しかし、彼に対する時子の行動は、やがて残酷にエスカレートしていきます。
*
戦争で四肢と声を失った夫と、その妻。二人だけの閉鎖空間で進む物語は不気味で陰惨ですが、物語はただグロテスクなだけには留まりません。
登場人物の心理描写や、究極の愛を描いた作品 でもあります。一見地獄のような舞台設定ですが、「極限状態」だからこそ描かれる夫婦愛には美しさがあります。
妻・時子の心理描写も圧巻です。一見狂気的なようで、とても人間らしい彼女の感情を巧みに描写しています。
過激な描写もあるため、読む人をかなり選ぶ作品です。一方で、刺さる人には本当に「刺さる」物語です。
『孤島の鬼』
あらすじ
同僚の初代と恋に落ち、婚約をした主人公。
しかしある日、初代が殺されてしまいます。彼女を殺したのは誰なのか?彼女は、何故殺されてしまったのか?
その秘密を探るため、親友の諸戸とある島に訪れた主人公。
しかし、そこに隠されていたのはある「おぞましい」秘密で…。
*
ストーリーが面白く、イッキ読みできます。 文学と言うより、まるでエンターテイメントのような作品 です。
江戸川乱歩らしい猟奇描写、徐々に明かされる秘密と悪人の正体…。先が気になる展開から目が離せません。
猟奇的な描写も、「怖すぎる」というほどではないないため読みやすい作品です。
この作品の面白さは、主人公の親友・諸戸の恋慕にもあります。彼は同じ男性の主人公に対して、友情以上の感情を持っています。
退廃的な雰囲気の中描かれる二人の関係性は、耽美そのもの。
乱歩の短編に慣れた後、長編を読んでみよう、という時におすすめの一冊です。
乱歩らしい不気味な雰囲気も楽しめます。
『パノラマ島奇譚』
あらすじ
主人公・人見廣介は売れない小説家。そんなある日、彼は自分にそっくりの元・同窓生が病死したことを知ります。
彼は同窓生になりすまし、自分が理想とするユートピアを作り上げることにします。
*
無人島を改造して作ったユートピアに君臨する主人公。
そんなパノラマ島の描写は、とても艶やかで美しいです。ユートピアやディストピアを描いた小説が好きな人には刺さること間違いありません。
もちろん、ただ美しいだけではありません。
主人公の狂気や自己愛を描いた作品でもあります。
他人に成りすまして自分だけの理想郷を作ろうとする主人公の、どこか哀しい狂気。
そして、そんな主人公の狂った自己実現が、乱歩の筆致で耽美に描かれるのです。
まとめ
いかがでしたか?江戸川乱歩のおすすめ小説をまとめました。
江戸川乱歩の代表作は『少年探偵団』や『明智小五郎シリーズ』といった探偵もの。
しかし、江戸川乱歩の魅力は探偵小説の面白さだけではないのです。
乱歩の嗜好が詰まった刺激的な世界観。
それを、ただ恐ろしいだけでなく、どこか美しく描いてしまうところが江戸川乱歩の魅力です。
乱歩の小説は、不気味な怪奇と紙一重の美しさや、人間の本質を描き出した作品であるともいえるでしょう。
そんな江戸川乱歩の小説は、痛烈な印象をもたらし、忘れられない極上のエンターテイメントを届けてくれます。
読書の秋に、読んでみてはいかがでしょうか。
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